東京画

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製作国 西ドイツ/アメリ
初公開年月 1989年6月
鑑賞メディア;CS

監督:ヴィム・ヴェンダース3点
脚本:ヴィム・ヴェンダース2点
撮影:エド・ラッハマン2点
音楽:ローリー・ペッチガンド、ミーシュ・マルセー、チコ・ロイ・オルテガ3点


 ヴィム・ヴェンダースが80年代の東京をエッセイのように切り取ったドキュメント。
 
 実際は小津安二郎の「東京物語」を題材にして現代の東京が当時とどれほど異なっているのか、もしくはどれだけ変わらないのかを検証したかったようだが、うまくまとまっていない。

 小津安二郎専属カメラマン厚田雄春への貴重なインタビューは非常に面白いものだ。しかし、せっかくの日本語でしゃべっているのに外国語でうるさく被せてそれを字幕で見るのはまどろっこしい。せめて日本版は監督のしゃべりはいいから日本語で聞かせて欲しかった。ニュアンスが伝わらない。

 また、技術的な内容を検証するためにも厚田の説明があるときは実際の小津作品のシーンを挿入するべきである。
 噴飯物なのは、せっかく貸してくれた「秋刀魚の味」の台本の中の多くの書き込みを接写するだけでも意味があるのにただページをめくるだけで題名も分からないというくだり。小津のマニアどころかファンでもないな。

 身も心も小津に捧げた厚田の涙の意味をヴェンダースは分からないだろう。

 笠智衆のインタビューも面白いものなのにヴェンダースが上からナレーションを重ねるので大変聞き取りにくい。雨の降る日の縁側でのインタビューというこれ以上ないロケーションを生かせていない。

 結局この映画で小津を尊敬しているらしいシーンは東京でのファーストシーンであるローアングルからの新幹線のシーンだ。まるで柔らかいろうそくの様に新幹線が奥から手前へ迫ってくるシーンは他の映画でも見たことがない。

 もうひとつは込み合うステーションで小さな子どもが歩くのが嫌で手を引かれているのに何度も倒れこむところだ。しかし、これが小津の見た東京とどのような関係性を見出しているのかは良く分からない。

 飲食店のショーウィンドウに並ぶ蝋で作った本物そっくりのサンプルに興味を持って長々と製作現場を写すが、これも意味はよく分からない。確かに面白く見られるが、小津との関連はわからない。竹の子族(懐かしい)にしても同じ。場面としては面白いが、そこから日本の東京の小津の何を検証したいのかわからない。

 このようにヴェンダースは小津を研究しているのではない。自分が見た東京をスナップ的に写しただけである。その旅の途中で小津に関わった老人へのインタビューをしただけなのである。だから全く東京とも小津とも関係のないヘルツォークへのインタビューなどカットすればいいのだ。

 私は、「パリ・テキサス」や「ベルリン天使の詩」のころからこの監督は下手だと思っていて以後全く観ていないのだが、今回のこのドキュメントでその見立てに間違いが無いことを確信した。

 ただ、80年代の日本の風俗映像としては一定の価値はあるだろう。また、笠と厚田のインタビューが収録されていることも。音楽も無機的で暴力的でいい。それで3点をつけた。
 しかし、電車の窓から併走する別の電車を撮るとか走る車から雨の東京の町並みを撮るとか余りに素人ぽくないだろうか。
 加えて名作「東京物語」の冒頭とラストをこのドキュメントの初めと終りに持ってくるのは全く物語性を否定したやり方だ。意図が読めない。

 そんなことより小津の愛用していたストップウォッチには、細かい印があって、常に撮っている時からそのシーンの秒数を計っていたという逸話がある。ヴェンダースにそのような映像に対する厳密さの何分の一でもいいので欲しいところだ。感覚だけで映画を撮るのはもうやめてもらいたい。