ゼラチンシルバーLOVE

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☆☆☆
初公開年月 2009年3月7日
鑑賞メディア;CS

監督:操上和美3点
脚本:具光然3点
撮影:千葉史朗4点
美術:池谷仙克4点
撮影監督:操上和美5点
衣装:祐真朋樹3点
編集:丸山光章3点
音楽:今堀恒雄5点
主題歌:井上陽水『LOVE LILA』4点
照明:石井大和4点
装飾:谷田祥紀4点
録音:山方浩2点

出演:永瀬正敏2点、宮沢りえ2点、役所広司3点、天海祐希2点、水野絵梨奈2点、SAYAKA2点

 ジャン=ピエール・メルヴィル監督、アラン・ドロン主演の傑作「サムライ」を意識したかのような作品。ハードでクールな世界がスタリッシュに描かれる。

 さすが監督は写真家だけあってその画面構成や色合いは全てのショットで活かされている。出来るだけ台詞をそぎ落とし、その配色と構図だけで孤独な男女の無機質な日常をとらえている。

 実際にはありえないシチュエーションばかりだが、話の内容ではなく画面を作ることに専念しているのでそれを追う映画だ。

 殺し屋の女(実は冒頭からこの女が監視されている殺し屋であることが新聞記事で分かる)があんなショーウィンドウのような部屋に住むわけ無いし、ファッションモデルのようなスタイルで外出するわけも無い。

 天海祐希の店はいつも客がいないしバイオリニストまで雇っている。経営が続くわけが無い。

 宮沢りえ永瀬正敏を殺害した後、カメラのフィルムは抜くが、残された多くのビデオや写真は手をつけずにしかも指紋を残して立ち去るのも不自然。

 つまり、永瀬が宮沢を監視している間にそれに恋する映画なのだ。そのエロの象徴としてゆで卵が使われている。足しげく通っていた天海の店には行かなくなる。宮沢の秘密を知ってしまってからも永瀬はその恋心を抑えることが出来ずに接触を持ってしまう。そこで殺されてしまう。という単純な話なのだ。

 それらを表現し象徴するのに卵や砂漠や殺風景な倉庫街や汚れた壁やシェービングクリームが使われる。

 が、残念ながら宮沢りえがいまひとつエロチックではない。殺人の悪寒に煩悶しているシーンでもエロを感じない。あれでは体操だ。覗かれている被虐的なエロさが出ていない。
 それと同じく天海祐希にも色気が無い。マネキンのように立っているだけだ。

 監督は静止したシーンではその美的感覚を存分に出せているが、動いたり話したりすることによって出さなければいけない映画の躍動感は全く出せないでいる。だから、劇中に高倉健の映画を出してしか動きを表現できていない。

 逆に全編に流れるブルースギターは素晴らしい効果を上げている。PV的に見ればいい出来だ。
 モノクロで撮ったほうが良かったのではないだろうか。