いつか読書する日

初公開年月 2005年7月2日
鑑賞メディア;CS、DVD
鑑賞メディア;CS、DVD
日本映画本来のしっとりとした情感とサスペンス映画のような無機質な画面構成や台詞のバランスがよく取れていて飽きさせない。それは、既に、ファーストシーンで主人公の田中裕子が自転車で暗い長い下り坂を降りて行くところから観客に何が起こるかを暗示している。その場面での息遣いや、自転車のチェーンの音。夜明け前に働く人たちの余りにも普通な日常が面白い。
この作品では、DVや児童虐待も描かれる。この部分は、ホラー映画を観ているようで怖ろしい。体に直接落書きされた子どもを突き放した視点で撮る。この演出は怖い。が、その怖さは、細かい演出にある。住居や無表情のこどもや無表情の役人達の演出。
また、ボケ老人の心象風景を映画ならではの演出で見せるところは、面白く哀しい。
これらを、末期癌の妻とそれを介護する夫と自分の中の本棚だけで生きようとする女の三者に絡ませて話をすすめる。長崎の町並みの美しさと地方都市独特の殺風景な様子がこれもバランスよく表現されている。
牛乳を飲まない男が毎日牛乳を女に配達してもらうことだけでつながっている男女。自分の死を悟ったときその関係に対して妻はどうするべきか。複雑で、見ているものを考えさせずにはいられなくさせる。あくまでもそれを淡々と描こうとする態度が潔い。
全体的には、役者に演技のリアリティを求めているので大げさな演技は無く、それゆえに「槐多!」と田中演じる美奈子が叫ぶシーンが生きてくる。役者達も地味な演出によくこたえうまいと思う。
ただ、ラスト、岸部一徳が水に溺れる子どもを救い、笑いながら死ぬ演出はいただけない。最後に変に盛り上げてリアリティを欠く。