花とアリス

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☆☆☆☆☆
初公開年月 2004年3月13日
鑑賞メディア:NHKBS

監督:岩井俊二 5点
プロデューサー:岩井俊二 4点
脚本:岩井俊二 5点
撮影監督:篠田昇 4点
撮影:角田真一 4点
美術監督種田陽平 3点
編集:岩井俊二 4点
音楽:岩井俊二 3点
印象的な出演者:鈴木杏 3点、 蒼井優 4点、郭智博 4点、平泉成 5点


 1年のうちに1・2度仕事を辞めたくなる。理不尽な出来事にいかんともしがたいストレスが溜まる。ちょうど今回その時期にあたった。それもバレエがらみ。

 なのにバレエが出てくるこの映画をたまたま深夜のNHKBSで観るともなしに観ていて引き込まれて最後まで見てしまった。

 親友同士の女の子2人が、記憶喪失になった一人の青年をめぐって繰り広げる奇妙な三角関係を描いた青春ラブ・コメディ。監督は、「スワロウテイル」「リリイ・シュシュのすべて」の岩井俊二。もともとインターネットで配信された同名の短編ドラマを映画化。主演は「Returner」の鈴木杏と「リリイ・シュシュのすべて」の蒼井優。クライマックスのバレエシーンを含め、劇中幾度か訪れる映画的奇跡の瞬間に心震える。

 というallcinemaonlineの解説。

 2004年のこの映画はもう既にカルト的扱いを受けているようだ。
 私は、全く知らずに観てしまった。多分原作は少女漫画なんだろうな。とか、アリス(蒼井優)の父親の平泉成がやけにうまいなぁ。でも、娘と年齢は離れすぎだろう。ちょっと無理あるよなぁ。とか考えながら。

 ところが、この親子二人が鶴岡八幡宮でデートのようなそうでないようなぎこちない関係のまま、トランプをしたり中国語をしゃべったりところてんを食べたりするところが伏線になっていて、後半の海岸での花(鈴木杏)とアリスのつかみあいのけんかへの流れが出来ているところが素晴らしい。脚本が良い。

 海岸近くに風力発電の風車があったりトランプ手品をするところで次のシーンを予想できたもののトランプが海岸を舞う場面は美しい。三角関係の男女が拾ってゆくトランプの柄は不思議の国のアリスだ。ふたりのけんかを自分が原因でありながら止めることが出来ない弱弱しい落語少年(郭智博)が袖を引っ張っているところも良い。日本映画以外ではありえないシーンだ。

 手塚高校で手塚治虫のマンガのキャラがたくさん出てくるとかの細かいオタク的シーンはさておいて、やはり蒼井優がうまい。それ以後の映画の本数をみても使える現代的な役者なのだろう。

 ところてんで嘘がばれてしまったとき、丸い鼻を指ではさんであやまるところは、可愛く切ない。自分で勝手に存在していない過去の恋愛を作り上げていく設定も十代の少女の普遍的なテーマとして扱っており、またそれを変に文学的、退廃的に見せていないところが面白い。

 こうして、時々何気ない日常から出来たような日本の映画を観ると心のリハビリにはとてもいい。昭和30年代には成瀬巳喜男監督作品など結構このようなものがあったはずだ。観客もそれなりに集めていた。
 激しいアクションも無く殺人も起こらないが、退屈しないで見られる邦画の伝統がある。こういう映画に心惹かれるのは疲れているからか、それとも老人の始まりか。