わたし出すわ

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☆☆
初公開年月 2009年10月31日
鑑賞メディア;CS

監督:森田芳光2点
脚本:森田芳光1点
撮影:沖村志宏4点
美術:山崎秀満4点
衣裳:宮本まさ江3点
編集:川島章正3点
音楽:大島ミチル3点
音響効果:伊藤進一3点
主題歌: 辻詩音『ほしいもの』
照明:渡辺三雄3点

出演:小雪(山吹摩耶)3点、黒谷友香(魚住サキ)3点、井坂俊哉(道上保)3点、山中崇(川上孝)3点、小澤征悦(保利満)3点、小池栄子(平場さくら)3点、仲村トオル(溝口雅也)3点、小山田サユリ(道上かえで)3点、ピエール瀧(平場まさる)3点、北川景子(記者)2点、永島敏行(クラブの住職)3点、袴田吉彦(天草大二郎)2点、加藤治子(神林多恵)3点、藤田弓子 (川上たみ)3点

 不思議な作品である。

 どの画面も構図や色合いを工夫してよく考えてあるし、印象的に作ってある。平面的な画面や奥行きのある画面のどちらも美しく何か意味があるように感じさせる。

 しかし、森田監督の悪い癖でそこには何の意味も無い。たとえば、ふたりの人物が向かい合っているのを画面の左右においているとき、突然、カット割が入ったりする。なぜ割るのかはわからない。他の同じようなシーンでは入らない。意味ありげだが、映画のリズムが出来ているわけでもない。
 また、右を向いている人物の背中側に大きな空間をあけて撮ったりしている。しかし、そこに次のシーンへの準備や時間の経過や空間の意味は何も無い。

 あくまで、話も画面もリアルさを排除しているように思える。いつも同じ服を着ていて全く汚れない主人公、小雪。カーブした長い廊下が続く病院。なぜか箱庭協会の本部がある函館。殺人未遂の証拠品であるナイフを手袋もしないで触る刑事。その折りたたみ式のナイフはさきほど病院で主人公が母親にりんごの皮をむくときに使っていた。その病院では何かの機械につながったヘルメットをかぶった患者である母親の前で一人でしりとりを続ける主人公の女。と、いうような象徴的な意味ありげな小ネタが延々と続く作品だ。

 独特のユーモアのようでもあり、ジャン=リュック・ゴダールのパロディのようでもあり、謎をいくつか振っておいて謎解きは中途半端にしているのもわざとだ。

 映画の基本を崩したい意図を感じる瞬間があるかと思うと、極めて映画的に的確であったり、結構悩ませる作品だ。

 多分、俗っぽいお金を扱いながら全く逆の無機質な内容にしたくて、シュールな前衛的な雰囲気を狙っているのだろう。しかし、その意図は観客に伝わらない作品だ。

 オリジナルの脚本では、やはり駄目なのだ。にもかかわらずスタッフの映画的センスがいいので作品としてなりったっている。役者もしかり。下手な役者はいない。

 監督だけが独りよがりしている無目的な芸術作品なのだ。画面や演出はプロだがそこに目的が無いので見ていて疲れるだけの駄作になっているところが不思議な作品だ。