初恋

イメージ 1

☆☆☆
初公開年月 2006年6月10日
鑑賞メディア;ストリーミング

監督:塙幸成3点
原作:中原みすず『初恋』
脚本:塙幸成、市川はるみ、鴨川哲郎3点
撮影:藤澤順一4点
美術:斎藤岩男4点
衣装:宮本茉莉4点
編集:冨田伸子4点
音楽:COIL3点
音楽プロデューサー:穂苅太郎3点
主題歌: 元ちとせ 『青のレクイエム』

出演:宮崎あおい(みすず)3点、小出恵介(岸)4点、宮崎将(亮)3点、小嶺麗奈(ユカ)3点、柄本佑(タケシ)2点、青木崇高(テツ)3点、松浦祐也(ヤス)3点、藤村俊二(バイク屋)2点

 原作者の中原みすずを主人公として、フィクションかノンフィクションか分からない仕組みにした上、実の宮崎兄妹を映画の中でも兄妹として出演させる少々フェイクな作品。

 私自身は60年代末期を中学生として過ごしたのだが、現代より荒削りで貧乏だった当時の雰囲気は細かいところに良く出ている。
 地下の暗いジャズ喫茶に代表される若者文化の色合いやラブホテルの立ち並ぶ裏通りの雰囲気。何かというとずっとハイライトを吸っていた男女。

 コラムシフトでエアコンも無い車。ノーヘルで当たり前だったバイク等時代のディーテールをうまく表現している。

 映画は結構センチメンタルにすすむ。それは女子高生の純潔な恋を描きたいからだろう。溜まり場であるジャズ喫茶に集まる若者達との有機的な関係性には深入りせず、みすずと岸の共犯と恋だけに焦点を当てている。

 したがって思想的な問題にはそれほど触れていない。また、岸という東大生が佐藤栄作首相(栄作は岸信介の弟)の親族であることが示唆されるが、ファンタジーとしては面白い。

 雨の降らし方、池に浮かぶごみの比喩的表現、カットバック、構図、兄妹の母親の顔を映さないなど映画的にわかりやすく、真面目だ。

 小出恵介もそれなりに味を出しているし、宮崎あおいも童顔を生かして当時の高校生らしく、いい映画なのだが、私にとっては今ひとつ胸に迫るものがなかった。それは、全体的に団塊世代特有のノスタルジアに彩られているからだ。

 ラストで当時はほとんどがモノクロだった写真を使ってその後の彼らを説明するのだが、ほとんどの人物が夭折している。
 反抗していた団塊の憧れは若死にだった。しかし、現実の彼らはのうのうと生き延び、おとしまえもつけず明るい明日があるかのようにふるまっている。それを宮崎演じる純粋な処女のままの「みすず」に押し付ける厚顔無恥さはいただけない。