第26話 燃えろ栄光

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本放送:昭和41年(1966年)6月26日
鑑賞メディア:ABC・WOWOW

監督:満田かずほ
特技監督:的場徹
脚本:千束北男

出演:佐原健二(万城目淳),西條康彦(戸川一平),桜井浩子(江戸川由利子),工藤堅太郎(ジョー相川), 穂積隆信(ビル大山),武藤英司(奥井プロモーター)

怪獣:ピーター

 監督の演出が日活の石原裕次郎シリーズのような味わい。編集のテンポが非常によく、ワイプを多用した場面転換が独特の世界観を作る。
 特にボクサー、ジョー相川を演じる工藤堅太郎に失踪後、ずっとピエロのメークを施し、日常からの逃避を暗示している。はじめてみた当時、その演出法の意味がさっぱり分からなかった私は、シリアスなシーンでも昼間でもピエロのメークを落とさない主人公に違和感しか憶えなかった。今見ると工藤堅太郎の動きもキレが良い。
 また、穂積隆信も大げさなわざとらしい演技がうまい。わかりやすくばかばかしい。

 肝心の怪獣ピーターの出来は今一つ。まず小さな両生類か爬虫類かよくわからない生き物のはずがどうみてもワニの子ども。ワニは爬虫類なので水の中では生きられない。なのに水を満タンに入れた水槽の中で浮いているだけのワニの子どもが哀れ。
 気温が上がると大きくなるというアイディアは面白い。火事の中で巨大化することもいい。しかし、最後大火事の中でジョー相川とピーターがどうなったのか分からないまま唐突に終わる。

 ピーターの暗示から解放されたジョー相川は再びボクサーに戻る決意をしたようだ。しかし、ピーターの行く末をはっきりさせない演出には不満が残った。

第27話 206便消滅す

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本放送:昭和41年(1966年)7月3日
鑑賞メディア:ABC・WOWOW

監督:梶田興治
特技監督:川上景司
脚本:山浦弘靖金城哲夫
出演:佐原健二(万城目淳),江川宇礼雄(一の谷博士),桜井浩子(江戸川由利子),西條康彦(戸川一平) ,桐野洋雄(オリオンの竜),八代美紀(スチュワーデス),伊藤久哉(206便・飯島機長),緒方燐作(206便・中村副操縦士),小泉博(管制塔・金子主任)

怪獣:トドラ

 異次元に巻き込まれたジェット旅客機の話。文字通り洗濯機の渦の中に模型の飛行機が巻き込まれていく様はスケール感も何も無く却ってシュールな絵。異次元は空の雲の上にあるようでSFというよりファンタジー
 その雲の中ではゼロ戦グラマンや第二次大戦で活躍した戦闘機も取り込まれていた。ここらは、映画「未知との遭遇」の冒頭のネタと同じ。
 どういうわけか、雲の中の地面は宝石で出来ていてオリオンの竜というかっこいい名前を持つ悪党がそれをあさってる時、何の説明も無くトドの化け物トドラ登場。

 このトドラをはじめてみたときのがっかり感は今でもよく憶えている。小学生の私にもこれが、名作「妖星ゴラス」に出てきたマグマの使いまわしだとわかったし、前足はともかく後ろ足は着ぐるみに入っているおっさんのひざで折れ曲がっているので動きが鈍い。それに「巨大なアザラシ」と淳ちゃんは表現しているが、アザラシとは似ても似つかない。

 唯一、レーダーでも機影を捉えることは出来ないのに音だけしていることで不安を煽る演出は面白かった。

第28話 あけてくれ!

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初放送:昭和42年(1967年)12月14日
鑑賞メディア:ABC・WOWOW

監督:円谷一
特技監督:川上景司
脚本:小山内美江子

出演:佐原健二(万城目淳),江川宇礼雄(一の谷博士),西條康彦(戸川一平),桜井浩子(江戸川由利子), 柳谷寛(沢村正吉),東郷晴子(沢村トミ子),天本英世(友野健二)

怪獣:無し

 超常現象を扱った作品。現代人がかかえる様々な日常のトラブルから解放されて異次元の理想郷へ逃避する物語。
 一の谷博士が登場しているし、役所も調査しているが、電車の車両が空中に浮いたりする現象についての解説はない。どういうわけか、異次元とこの世を行き来する列車があって思い込むと乗り込めるようだ。
 天本英世演じる友野健二という作家は、通常の物理現象が無いおかしな世界への行き方を知っているようで、その世界から通信してくる。天本英世はいつものマッドサイエンティストから考えるとその狂気は押さえ気味。

 うだつのあがらない会社員沢村を演じる柳谷寛はおどおどした演技がうまい。ステロタイプながらその妻トミ子を演じる東郷晴子もコメディのようで面白い。
 しかし、物語全体は憂鬱で列車の中も異次元の世界もゆがんでいたり、混沌としていたり理想郷には見えない。
 結局、生活に疲れた沢村は異次元への列車に乗れたのかどうかはわからない。

 この作品は最初の本放送では放映されず再放送で日の目をみたらしい。だから、子供時代に見た記憶が無い。しかし、タイトルバックで夜の街を電車が飛んでいるシーンなどはなんとなく覚えているので1984年の放送で見た記憶だろう。確かにVHSビデオには残っていた。

第14話 東京氷河期

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鑑賞メディア:ABC・WOWOW
本放送:昭和41年(1966年)4月3日

監督:野長瀬三摩地
特技監督:川上景司
脚本:山田正弘

出演:佐原健二(万城目淳),西條康彦(戸川一平), 桜井浩子(江戸川由利子),有馬昌彦(沢村照夫), 田島義文(関デスク),佐藤秀明(沢村治夫)

怪獣:ペギラ

 「ペギラが来た!」から1年後という設定。監督・脚本が同人物なので話に一貫性がある。
 冒頭、羽田空港に着陸しようとしていた飛行機が空中で静止して墜落する。その後、黒煙をともなった球体が出てきたので、少年だった私は思わず「ペギラだ!」と、テレビに向かって叫んだ。あの飛行の様子はそれぐらい印象的。
 東京がペギラに襲われ冷やされてしかも破壊されていく様子は見ているだけでわくわくした。だって、真っ白になった大都会で学校も会社もお休みになるなんて子どもの理想だ。夏なのにホワイトクリスマスだぜ。こういうインフラや引いては社会規範の破壊願望の実現というのが怪獣映画の醍醐味だ。まぁ幼稚な願望ですけど。

 ペギラに対抗している自衛隊の戦闘機のシーンは映画「モスラ」の使い回しらしい。したがって、画質が異なっている。しかし、ミサイルを発射するタイミングは合っていて、画面の切り返しは完璧。編集作業が細かい。

 この作品が単なる子どもの破壊願望を満たすものでないことは、沢村照夫と治夫親子の話か絡んでくることで重層的になる。沢村照夫は大戦中は有名なゼロ戦パイロットだったが今では出稼ぎ労働者から強盗をはたらく犯罪者にまで落ちぶれている。そんなことを知らない子どもの沢村治夫は父を捜しに東京へ出てきている。

 ペギラの攻撃を逃れながら治夫少年が真っ白な東京を逃げ回り、淳や一平のいる星川航空で父と再会する。このシーンも大してお涙頂戴なシーンでなくドライだ。突然改心した沢村照夫はセスナ機を乗っ取りペギミンHとともにペギラへ特攻隊のように突っ込んでいく。ここは、映画「ゴジラの逆襲」のラストと似ている。

 まだ、戦争の残滓が各地に残っていた昭和ならではの作品とも言える。ラストシーンも治夫が父照夫の遺骨を故郷へ持ち帰るところで終わる。

 ところで、ペギラが南極から日本へ上陸した理由が、地球温暖化ということになっていて、時代を先取りしている。南極では氷が溶け出したのでそれを嫌がって北極へ渡りをする途中に東京へ飛来したという説だった。ペギラはペギミンHだけでなく暑さも苦手なのだ。攻略法が又増えた。後日譚はシベリアで大暴れする様を見たい。

第5話 ペギラが来た!

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本放送:昭和41年(1966年)1月30日
鑑賞メディア:ABC・WOWOW

監督:野長瀬三摩地
特技監督:川上景司
脚本:山田正弘

出演:佐原健二(万城目淳),田村奈己(久原羊子),松本克平(天田隊長),森山周一郎(池田隊員), 伊吹徹(伊東隊員),黒木順(鈴木副隊長)

怪獣:ペギラ

 この作品にはどういうわけか一平と由利ちゃんが出てこないで、突然、南極観測船に乗る万城目から始まる。南極で「寒い寒い」といいながら息は全く白くない。
 また冒頭やその他のシーンでもフィルムの傷やノイズが見受けられリマスターが完璧ではないことがわかる。

 しかし、南極の氷山や観測船や観測所などはよく作りこまれ、ロケーションほどのスケール感は無いもののモノクロ画面とうまくシンクロして美しい。日本では1952年に公開された「遊星よりの物体X」の影響を受けていると思われる。アラスカの雪の中や正体不明の宇宙人との戦いなど、内容が似ている。

 また、シチュエーションは1956年(昭和31年)の南極地域観測隊第1次越冬隊に出てくるタロ・ジロの犬の話も取り入れていて面白い。行方不明の隊員の側にいたのはサブロという犬だし。この「ペギラ」の話は後の映画「南極物語」にも影響を与えているかもしれない。

 たった30分に満たない作品の中で男女の恋愛,異常気象や行方不明の隊員,重量のある雪上車が宙に浮く奇妙な現象,犬と人間の関係性とサバイバルの謎などテンポよくサスペンスを出してゆく脚本が面白い。
 多くの隊員の中でちゃんと個性も出している。鈴木副隊長が全てのことに反論するくせに最後はいたって根性がないという敵役まで出している。ただ、演じている黒木順の声がやたらいい声なのでいい人に思えるのだが、内海賢二の吹き替えらしい。

 紅一点の久原医師を演じる田村奈己は、典型的な昭和の美人。伊東隊員に襲われたり、夜のガレージで奇妙なものを目撃して気絶したり、ジープごと吹き飛ばされたりする。若くてきれいでインテリなのでいじめられるのはお約束。
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 ペギラも怪獣らしい怪獣。ペンギンの異常な突然変異かトドとのハイビリットか何か分からないが、反重力光線で何でも浮かせてしまう。おまけにその光線は異常な寒波も含んでいるようだ。何を食べて生きているのかはよく説明されないが、肉食系っぽい。
 特にペギラが空を飛ぶシーンを見せないで、黒い球体が真っ黒な煙を出しながら空を横切るように見せるアイディアは秀逸。雪原に映えるだけでなく謎めいていて悪魔のようで面白い。

 結局ペギラの駆逐法は無く、ペギミンHを嫌がることが分かるだけ。そのことが次回の「東京氷河期」に続く伏線であることは、昭和の私には分からなかった。

第11話 バルンガ

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本放送:昭和41年(1966年)3月13日
鑑賞メディア:ABC・WOWOW

監督:野長瀬三摩地
特技監督:川上景司
脚本:虎見邦男

出演:佐原健二(万城目淳),西條康彦(戸川一平),桜井浩子(江戸川由利子), 青野平義(奈良丸明彦)

怪獣:バルンガ

 宇宙に漂う胞子のような生物が、何もかもを飲み込んで巨大化してゆくという発想が面白い。その造形も奇妙で化け物らしく良い。宇宙大作戦(スタートレック)の「宇宙の巨大怪獣」でもエネルギーを吸い取るようなものが出てきたと思うが、バルンガと対決させると面白いことになるはず。

 世捨て人となっているお決まりのマッドサイエンティスト(決してマッドではない)である奈良丸博士の暗い演技もよく、最後は「太陽が勝つかバルンガが勝つか…」という縁起の悪い事を言っている。

 パニック映画の雰囲気をかもし出していて、大都会が何かの原因で機能を停止してしまったためにいつもスポーツカーを乗り回している淳ちゃんと由利ちゃんが自転車で工場街を走るシーンは効果あり。

 一平の役どころとはいえ、バルンガによって破壊された車の破片で怪我をするのは可哀想だし、3回も手術をするなんてどんな大怪我なんだ。バルンガによって停電した病院のパニックを描きたいのだろうがちょっと現実離れしている。

 バルンガに対する疑問としては、エネルギーを吸い取るのはいいのだが、何のエネルギーを吸い取っているのか良く分からない。熱エネルギーなのか化学エネルギーなのか電気エネルギーなのか。またそれを何に変換しているのか?ヘリウムや水素に変換しているから体が浮いているのか?
 バルンガは化石燃料が好きのようなのに最終的には太陽の核エネルギーを吸い取りにいっているのもおかしい。が、そのいい加減さも含めて面白い。

第10話 地底超特急西へ

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本放送:昭和41年(1966年)3月6日
鑑賞メディア:ABCテレビWOWOW

監督:飯島敏宏
特技監督:的場徹
脚本:山浦弘靖、千束北男

出演:佐原健二(万城目淳),西條康彦(戸川一平),桜井浩子(江戸川由利子),石川進(列車指令室・西岡主任),塚本信夫(相川教授),山村哲夫(イタチ),青柳直人(ヘチマ),奥村公延(小山運転士)

怪獣: M1号
 
 一平がジュラルミンケースを間違えるくだりが早急で若干サスペンスに欠ける。また、当時(昭和40年代)靴磨きの少年というのはまだ存在していたのだろうか。
 稲妻号というのはなかなかいいネーミングだが、その造型はペンライトをヘッドライトに流用したりしていて、当時、間もなく始まる「サンダーバード」のそれとは比較にならないぐらいださい。ただそのトンネルを疾駆する音はかっこいい。
 列車司令室主任役の石川進のとぼけた味わいはいいが、安全装置のアルファベットを何度も間違えるところは必要だったろうか。そんな演出をするぐらいならイタチとヘチマという二人の少年たちが地底超特急に乗り込むところに時間を割いたほうが面白かったのでは。
 暴走した稲妻号が最後に大爆発をするところは迫力がありスピード感も出ている。しかし、稲妻号の上に動かない人形丸出しのM1号を乗せる必要は無かったのではないだろうか。小学生の私でさえあのシーンは興ざめだったのを思い出した。
 東海道新幹線を越えるジェット噴射で走る超特急というSF的アイディアと人工生命体というバイオテクノロジーの最先端の発想がうまく調和されていないように思う。
 最後に、列車は激突し、かろうじて耐震ロッカーに逃げ込んでいた少年は助かるのかと思いきやM1号とともに星になってしまうというオチは少し残酷。当時の私でも助かった少年が宇宙空間でロッカーの扉を開けて外を覗くところで余りの非科学的飛躍にがっかりした。

 HD化されて細かい部分もわかって興味深かったし、不条理な脚本もそれはそれで今の私には面白かった。
 M1号は手長猿の化け物ではなく細胞分裂だけが猛烈にすすんだ不定形のゲル化したような怪物のほうがリアリティがあったのではないか。